ダブル被災

 

先日、当会スタッフが以前よりお世話になっている大槌町の仮設住宅にお住まいの方を訪ねました。「遠いところよく来てくれたね。さあ入って入って」と、スタッフが突然伺ったにも関わらず温かく迎えてくださり、お茶っこしながら久しぶりの再会に話が弾みました。その会話の中で強く心に残ったことばがありますのでご紹介します。

 

それは“ダブル被災”ということばでした。

 

以下、住民の方のお話しの一部です。

「いま何とかして新しい家を建てようとしているんだ」

「歳もとしだからね、借金するわけにはいかない。何とかいまあるお金でやりくりしたいと考えている」

「しかし、現実は家を建てようにも建築費の高騰(資材や職人不足による人件費高騰など)でとても予算内で家を建てられないでいる」

「世間では東京五輪の競技場が、○○氏のデザイン案は数千億円だ、デザイン変更などにより数千億円のコストダウンだ、○○氏のロゴデザイン案を変更する際、すでに数十億円使っただのと言われている。我々被災地の人間には理解出来ない話だ」

「私たちに言わせれば、“ダブル被災”とも言える」

 

東京五輪による復興の遅れは五輪誘致の際から懸念されていたことです。

(当会過去記事:

https://www.facebook.com/kirikirikokuwosottoouensurukai/posts/495448903934394) 

これらの懸念がいままさに現実となっているのは否めないのかもしれません。

 

また、大槌町にお住まいの別の方のお宅を訪ねた際にもこの話をしました。この方も震災以降はずっと慣れない仮設住宅での生活でしたが、現在何とか自宅を再建されました。「まさにそのとおりですよ」「五輪だけではないですよ。他にもそれで本当に被災地の生活が変わるのですか?復興が進むのですか?と、思うことは多くあります」とおっしゃっていました。

 

スタッフが見た限りでも、町は盛り土が進み風景は一変してきています。しかしその盛り土は果たしていつ終わるのか。まだまだ相当の月日がかかることでしょう。

 

後日、釜石市にお住まいの方ともお話をしました。その方は「ハコモノばかりが建って、本当の復興は何も進んでいない」「毎朝、家の前の道路は土埃りと共に盛り土のための大型ダンプカーで溢れ返り渋滞を起こしている。この生活がいつまで続くのか…」とおっしゃっていました。

 

2015年9月11日付産経新聞によると、震災から四年半を経た現在でも、岩手県=1万9189人・宮城県=2万8403人・福島県=2万491人の方々が仮設住宅での生活を余儀なくされています。(8月末時点)

※尚、復興庁によると民間賃貸住宅や公営住宅、親族らの家に身を寄せた被災者を含めた避難者数は、全国に約19万5000人だそうです。(9/29発表)

 

“運良く”復興住宅団地に移られた方々も、生まれ育った部落を離れなければいけなかったり、「昔の○○さんのお宅は立派な家だったんだよ?」と言われる方がお住まいになっていたりしていると聞きました。

 

また、仮設住宅の造りは誠に質素であり、いい加減な工事が施されているところもあるそうです 。寝ていると結露により布団がずぶ濡れになっていたり、台所の吊り戸棚の扉を開けた途端、戸棚ごと落下してきて怪我をした話も聞きます。このようなことは、私たちの知っている方のまわりだけで起きていることなのでしょうか。

仮設住宅は、わかりやすく言えば建設現場の現場事務所などに使われているプレハプを住宅にした造りです。壁は薄く隣の部屋の話し声は筒抜けです。プライバシーは有って無いようなものとストレスを感じている方も少なくありません。

 

今回は今でも仮設住宅での生活を余儀なくされている方がおっしゃった“ダブル被災”ということばが頭から離れず、このことばを多くの方に伝えたいと思いました。今後とも、このように私たちが目で見て感じる東北被災地の現状を伝えていきたいと思います。

 

また末尾ながら、先日の関東・東北豪雨にて洪水被害に遭われた茨城県、栃木県、宮城県の皆さまへ心よりお見舞いを申し上げます。